2016年8月29日月曜日

シンポジウム「巻原発住民投票・あの日、あの時」で司会を務めました

来場者約80名(Photo: Sohei Ogura)

2016年8月7日に旧庄屋佐藤家で開催されたシンポジウム「巻原発住民投票・あの日、あの時」の司会を務めさせていただきました。ゲストは笹口孝明さん(「住民投票を実行する会」代表、元巻町長)、坂井恵子さん(元「青い海と緑の会」)、織原正明さん(元NT21報道部副部長)、松井克浩さん(新潟大学教授)で、それぞれの立場から当時を振り返ってもらいました。

笹口さんは、「実行する会」の立ち上げから、町長就任、そして住民投票の実施にいたるまで、そこにあった苦労や意義を。坂井さんは、小さな子どもをもつお母さんたちが中心になって立ち上げた「緑の会」の結成から街宣、選挙活動を。織原さんは、テレビ記者として「住民自治」の観点から報道して、見て聞いたこと。松井さんは、社会学者として住民投票後の巻町を研究調査してみえてきた巻町住民投票の先駆的な意義をお話しいただきました。

ゲストの方々が人生を賭けて経験してきたことの重み、来場者の問題意識の高さに、緊張しながらも、どうにかこうにか話を聞き出していきました。14:00からはじまり、途中休憩をはさみ、16:30の終了予定を過ぎて、17:00頃に閉会となりました。

至らない点も多かったと思いますが、恥をかきながらも成長させてもらう機会だったと思っています。いい経験をさせてもらいました。

シンポジウムの最後にも一言コメントさせていただきましたが、今回の準備であらためて感じたことがあります。それは住民投票の経験を振り返ることは「防災」の視点に似ているということです。

原子力発電所建設計画は、自然豊かな角田山の麓「角海浜」に突如としてやってきました。それに対し、「代議制民主主義」を重んじながらも、住民自身がそれが充分に機能していない、議会が住民の希望と食い違った決定をしようとしていると感じたときには、住民投票による「直接民主主義」という方法もあることを、巻町の経験はよく教えてくれると思います。

さらに言えば、似たような事態はこれからも起こりえるし、沖縄の基地問題をはじめ現在進行形で起こっています。

わたしたちひとりひとりが完璧な市民ではないように、民主主義もまた完璧なシステムではありません。どこかに軋みが生じたときには手入れが必要です。

天災は忘れた頃にやってきます。「防災」訓練のひとつとして巻町住民投票の経験、歴史は、とくにわたしたち若い世代が受け継いでいくべきことだと思いました。

以上です。
以下にわたしが撮影した写真もすこしアップします。

シンポジウム前に福井のお母さんたちの料理でお昼

写真奥に写るのが斉藤文夫さんです。斉藤さんは、角海浜へ足繁く通い、廃村へと向かう過程を撮影しました。シンポジウムでも途中で話をふって、角海浜の様子をすこしお話しいただきました。

左手前が主催者のひとりの中村正紀さんです。中村さんは、巻原発設置反対会議の事務局長として長く反対運動に携わってきた方です。

巻町で長く続いた反対運動の特徴として、時代ごと、局面ごとに「役者」が立ってきたことがあります。今回のシンポでは笹口さんたち「実行する会」結成の1994年からの振り返りになりましたが、中村さんたちはさらに以前から運動を行ってきました。

1995年1月に「実行する会」は自主管理の住民投票を実施しました。当時の町長が当選した票数よりも多くの町民が原発建設に「反対票」を投じました。しかし、その直後に町長は東北電力と面会、予定地にあった町有地を臨時議会を招集して売却しようとしました。

その議会を流会にさせた前線にいたのが中村さんはじめ反対派住民でした。賛成派議員は、臨時議会を反対派議員に告知せず、月曜(1995年2月20日)に予定されていた議会まで議員室に泊まって潜んでいました。そこを破ってはいっていき、揉み合い、どうにか流会に持ち込んだときのことも、シンポジウムの途中で話をふって伺いました。

8/14のシンポジウム〈2〉

この日のゲストのひとり上原木呂さんは巻町住民投票のときには町民同士に「パッションの連鎖がおこった」と発言していました。だれかが起こした行動に、また他のだれかが応えていった運動を振り返っていました。わたしはこの日は残念ながら、途中参加、途中退席となってしまいました。

8/20「たっつぁん『ふる里』を歌う」

福井の里にあたたかい歌声が木霊した

この日も名曲『角田山』がしみました。シンポジウムとはまた違ったゆったりとした雰囲気の中、コンサートが開催されました。巻町制100周年を記念して、町から依頼されて作った曲『角田山』。「角田山よそのままで〜♪」とうたう歌詞に対し原発賛成派議員からクレームがついたエピソードの紹介がありました。「原発に賛成も反対もうたってないんだけどねぇ」と。

長く続いた複合イベント「巻原発住民投票から20年〜明日の巻地域を考える〜」、司会として関わらせていただきいい経験をさせていただきました。お世話になった皆様、ありがとうございました。


9月3日の夜に反省会がありました。(9月8日追記)