2011年5月11日水曜日

「寺子屋」あるいは「私塾」について007

号が変わって、第三冊です。


伊東多三郎氏の『近世史の研究 第三冊 文化論・生活論・学問論・史学論』株式会社吉川弘文館が昭和58年6月1日発行。


定価7,800円とお高いので、もちろん図書館。正確には新潟市中央図書館ほんぽーとのお世話になりました。


以下に箇条書きメモ。


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第一部・文化論において、江戸後期の日本北方開拓に発揮された探検的精神を取り上げた項。


(67p.)一国民・一民族の文化はその民族性や自然的立地条件に依存するから、その歴史過程で政治的・経済的条件の変化によって盛衰、または発展退化が起こったとしても、その特性にまで本質的な変化を引き起こすことは少ない。それよりもむしろ他国民・異民族との接触・交渉によって、国民的文化圏・民族的伝統に大きな変化が起こる場合がある。もし内に政治的・経済的条件の変化が暖慢であり、外に対外的関係の影響が少ないときには、一国民・一民族の文化はその文化圏の限界の内部で自己完了的に成熟するままに、発展の新芽を伸ばすことなく立ち腐れの状態を呈すこともある。特に日本文化史では政治的・経済的条件の変化が急激ではなかったから、外国との交渉、外来文化の摂取が既成文化の自己完了性を打破してさらに発展と進歩への刺激的・栄養素となっている。既成文化の温床の上で眠りこもうとする民族の精神が対外関係の刺激によって緊張し、活力を回復する過程が、日本文化史の一傾向であることを考えれば、文化史研究の問題として対外関係の重要性は説明するまでもない。


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非常に示唆に富む文章である。この段落が照らしている事例は数知れないと思う。
あぁ、この段落に出会えて良かった。
なんだか久々にそう思える文章でした。


異文化との接触において、渡辺京二氏の『逝きし世の面影』平凡社ライブラリーが興味深いなと思っていたところ。
1,900円か、本代がかさんで生活が...。
線をひいたり、たまに読み返したりするので、ついつい「買って読む」ほうを選択しがちです。